床から『淵の王』

私の部屋はとんでもなく散らかっているのでよく物がなくなる。今日は爪切りが見当たらなくて床に落ちているものをひっくり返して探していたら、舞城王太郎『淵の王』の単行本が出てきて、そのまま朝まで読んで読み終わった。この本はずいぶん前に実家に帰ったときに母の積ん読本の中に混ざっていたのをもらって帰ったものだが(私が小6で『煙か土か食い物』を読んだのも母が持っていたからだった)、そのままずっとそのへんに投げっぱなしになっていたのだ。

読み始めてからしばらく、床にずっと落ちてて気に留めてなかった物体をいざ開いてみたらこんなに強度があっていいものだろうかと思っていた。かっこいい服とかぬいぐるみとか生ゴミとか、力のある物体が落ちてたらその力故にすぐ気づくのだが、『淵の王』は本だから、その力は造形とか匂いみたいに拡散されて私のもとに届くことなくたぶん3年以上床に死蔵していた。今日落ちてるのに気づけたのも表紙の奥山由之の写真がかっこよかったからだと思う。とにかく本という物体ってすげえと思った。情報量がすごくて面白いことが外から一切見えない。内容もめちゃくちゃ良くて、今読めてよかったなという感じだった。