ホラーバイト

古くて大きな建物で夜までひとりで店番をして、時間になったら掃除と戸締まりをして帰るアルバイトをしている。

誰もいない建物をひとりで見回りするのはとても怖い。始めたての頃は(ちょうど少し前に壱百萬天原サロメのバイオ7実況を見ていたこともあり)明るいうちでもかなり怖くて、心拍数が上がるのを自分で感じるくらいだった。今では多少慣れてきたものの相変わらず怖いものは怖い。

仕事中怖くないように、客や同僚がいなくなって掃除の時間になったらスマホから音楽をかけて大声で歌を歌うようにしている。恐怖を感じるのは、周囲の様子を何か(幽霊、怖い人)が潜んでいる兆候であると頭が勝手に解釈してしまうからだ。古い建物は古い建物というだけでもうすごく怪しくて怖いわけだが、仕事である以上そこを離れるわけにはいかない。音楽をかけて歌を歌えば風や建物の軋む音も聞こえづらくなるし、なにより私自身と兆候を発し続ける建物の間に別のムードで膜を張っているような感じがして、怖さが緩和されるのだ。

昨晩はとても風が強く、ドアがガタガタ鳴ったり換気扇のファンが逆回転してぶううううんとエンジンみたいな音を出していてすこぶる怖かった。歌わねば、、、とスマホで平成仮面ライダーの主題歌ベストアルバムをかけることにしたが、ガタガタなっている窓から仮面ライダー龍騎のミラーモンスターが出てきそうな感じがして、奇しくも音楽が怖い方の想像力と一致してしまった。さすがにミラーモンスターはありえないと思ってはいるが、音楽に期待していた効果は得られず、選曲を間違えたなと思った。